現在の流行状況
数日来、新型インフルエンザ対策として、某電器メーカーが海外勤務者の家族の退避を開始したとの報道が流れています。当センターにも本件に関する問い合わせが多数寄せられていますが、現在、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の流行状況が、 新型インフルエンザの発生に近づいているという医学的証拠はありません。この件に関して変化があれば、またご報告いたします。
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数日来、新型インフルエンザ対策として、某電器メーカーが海外勤務者の家族の退避を開始したとの報道が流れています。当センターにも本件に関する問い合わせが多数寄せられていますが、現在、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の流行状況が、 新型インフルエンザの発生に近づいているという医学的証拠はありません。この件に関して変化があれば、またご報告いたします。
(流行状況)
・2008年の鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者数は減少
2008年の鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者総数は44例となり、2006年の115例、2007年の88例から大幅に減少した。こうした状況からH5N1型ウイルスが新型インフルエンザとして流行する脅威は低下しているとの意見もみられている。
・WHOが383例の症例解析を発表
WHOは2003年以来の鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者、383例について症例解析を発表した(Weekly Epidemiological Record vol. 83,46)。
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/2008who/67who77.html
それによればインドネシア、ベトナム、エジプト、中国、タイからの症例で90%を占めており、患者の年齢は約75%が20歳代以下の若年者だった。今のところウイルスの解析でも新型への変異はないと述べている。
・2009年からの中国での患者数増加
2009年1月から中国各地で鳥インフルエンザ(H5N1型)の患者が発生している。その数は8名となっているが、ヒトからヒトへの感染はおきていない。またウイルスが変異したことを示す報告もない。中国では鳥へのワクチン接種により鳥インフルエンザ対策を行なってきたが、この対策により現地の鳥で不顕性感染(発病せずに感染だけ持続させる)がおきている可能性がある。健康な鳥でもこの病気に感染している危険性があるため、現地に滞在する日本人はいかなる鳥にも接触しないように注意すべきである。
・鳥の流行は南アジアで拡大傾向
2009年になり鳥の間での流行は南アジアで拡大傾向にあり、インド西部やバングラデイシュなどで流行が確認されている。またネパール(ジャパ郡)でも初めて鳥の流行が発生した。
(対策状況)
・抗インフルエンザ薬の企業備蓄は日本でもできるか?
2008年12月にアメリカ政府は、抗インフルエンザ薬の備蓄に関する新たな方針を発表した(http://pandemicflu.gov/vaccine/antiviral_employers.html)。それによれば国家備蓄とともに、企業による備蓄を推奨するというものである。企業が備蓄した抗インフルエンザ薬は従業員に提供され、治療だけでなく予防用(暴露前も含め)として服用することも可能になる。こうしたアメリカの方針は画期的な対策と言えるが、この方法を日本で実施するのは難しいだろう。
まず一般の企業が販売業者から医薬品を直接購入することは、薬事法26条の規定により禁止されている。ただし、企業内に診療所があれば、そこで購入することは可能であるが、こうした職場は一部の大手企業などに限られるだろう。もし企業内で抗インフルエンザ薬を入手できても、それを従業員に提供するためには、医師法20条の規定により、医師が診察をした上で処方する必要がある。また、日本で販売されている抗インフルエンザ薬は治療と暴露後(患者に接触した後)の予防投与への使用が認可されているが、アメリカ政府が推奨している暴露前の予防投与は認可されていない。
このように、わが国では企業が抗インフルエンザ薬を備蓄するには法律的に多くの問題がある。さらに、企業での備蓄は国家備蓄に影響を与えることになり、企業の社会的道義を問われることにもなるだろう。以上の理由で、現時点で企業が抗インフルエンザ薬の備蓄をすべきではない。ただし、海外勤務者に関してはこの考え方と別になるが、この点については別の機会に述べる。
(文責 濱田)